メインフレーム技術者がなぜ育たないか?

By 高尾 - Posted: 2008/12/16 Last updated: 2009/04/11 - 4 Comments
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タイトルの記事を書くのですが、最初に理由から。オープン系に比べメインフレーム系の技術者が育つ(ここでは、より技術的に高度な仕事ができることを意味している)時間は遅いです。
その理由を明らかにすることで、メインフレームにたずさわっている人の将来と、穴に落ちてなかなか進まない状況を避けたい、さらにこのサイトでどうフォローすればいいのかも、できれば考えてみたいからです。

覚えることが多い
端的にいえばマニュアルの分厚さです。最近はDVDやWEBになったせいで、物量の把握が難しくなりました。推測ですが紙にすると、5メートル幅くらいのキャビネをドンと3段は占領するのではないでしょうか。
データセットで今使われているものにしても数種類、レコード形式の違いがそれぞれあり、扱うユーティリティも違います。さらにデータベースもやるとなるとIMSで数種類+DB2。
セキュリティのRACFもリソースごとに扱いが違い、言葉を覚えるだけでも一苦労。なんでもOSでやろうとするため、範囲が広い。Z/OSについてなんでも知っている、という無理をしないことが大事だと思います。基準はやはりLinuxエンジニアのような感じになるのでしょうか?そう絞っても覚えることは多いですが。
その場限りがむしろ例外
UNIXなどではコマンドをたたいて仕事して、その仕事のログと結果を保存しろなどとはいわれないと思います。メインフレームではTSOでいろんな仕事を済ませると「記録に残らない」とJCLでの仕事をうるさくいわれている人が多いと思います。少し大掛かりになると夜間バッチに回せ、といわれたりすらすることでしょう。対話的に仕事をするのと、定型的に仕事をするのでは「行動-フィードバック」のサイクルに大きな差が開き、それが学習効果にもたらす影響は大きいでしょう。
妙な徒弟制度
これは日本特有かも知れません。もともとメインフレームは研究所で最新の技術成果を投下した、いわゆるハイテク製品でした。そのころは扱う人もエンジニアだったのですが、自動化が進むにつれ、「定常業務については」誰もがコントロール可能なものになりました。このころから「どうしてこうするか?」ではなく、「こうしなくてはイケナイのだ。理由は聞くな。」という運用、オペレータの文化が育成されてきました。新人の「どうして?」という疑問に答えることもなく、形式主義となり長年勤めた人がエライ、という当初のコンピュータ運用とはかけ離れたものとなってしまいました。しかし、コンピュータはハイテク製品であるため、ある日突然、新技術により豹変します。形式主義では対応できないのです。また、「試す」という行為ができない現場では人は学習のしようがありません。
プログラミングの難しさ
このポータルでもプログラミングの解説を多く行っていますが、システムを触ろうとすると圧倒的にアセンブラーをつかわねばなりません。高水準言語でシステムと協調して動くプログラムを作ることのハードルがとても高いのです。これは、エンジニアに長時間の学習を強います。
コミュニティの乏しさ
メインフレームの世界には不思議なことにフリーウェアのポータルがありません。はっきりしませんが、アメリカではUS IBMが難癖をつけて潰す、と聞いたことがあります。ユーザーのスキルの低いことがビジネスチャンスであったことは間違いないのですが、今の時点でそれは正解でしょうか?
以上くらいを考えてみました。他にもあるかもしれません。ここから導き出されることは「自分用の環境をもち、すばやくテストする」「わからないことを人に聞ける、例がある」という点がLinuxなどと大きく違い、エンジニアが育たない原因かもしれません。
手前ミソになりますが、アルテシードでは前者をherculesで、後者をこのサイトでカバーしエンジニアの成長に貢献できたら、と思っています。
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4 Responses to “メインフレーム技術者がなぜ育たないか?”

Comment from 中村勝幸
Time 2011年9月28日 at 09:57

メインフレームの技術者が育たない理由は、現状のWindowsのようなオープンシステムと比較すれば簡単明瞭に説明できます。
?技術が個人にオープンにされていないこと。
?PCのように個人で自由に使って試行錯誤できないこと。
?オープンシステムの世界では、?が可能であるために技術や
 知識が多くの人と共有できること。

以上の理由から、オープンシステムでは個人レベルで技術追及が進み、強いては技術革新の促進にさえも貢献しています。オープンシステムの進化が速い根拠がここにあると確信します。

Comment from takao
Time 2011年9月29日 at 12:11

是々非々ですね。
最初のご指摘は、オープンソースと、オープンシステムを混同しています。
たとえば、Windowsはクローズドシステムです。どこがオープンですか?内部については知らされていません。Linux、MySQL, Apache,PHPというようないわゆるLAMPとは全く違います。

PCのように個人で自由に使えない、はそのとおりです、が、仮にチャンスがあったとしても個人で自由に使うために知らなくてはいけないことが多すぎるのが問題だな、と思います。
もう、20年も前ですが数年、夜中にテストをする仕事を続けていましたが、ひとりで全部をやれるようになるために2年かかりました。それだけしらなくてはいけないことが多いのです。

逆にいえば、PCはなにも知らなくても目的の部分だけを使えるようにできています。PC一台にWindowsが入っていて、ブートプロセスも、プロセス、スレッド、I/Oなど一切しらなくてもMicrosoft Wordは使えます。この統合のされ方はMicrosoftが創り上げた偉大なシステムだといえると思います。

オープンシステムで技術や知識が共有できる、というのも錯覚です。「そういうチャンスがある」に過ぎず、現状のZ-OSはIBMの反省もあり、Red Bookの公開など「チャンスは同様に存在」します。しかし、90%のエンジニアは単なる技術の消費者です。とくに日本のエンジニアのどれだけの人が共有に足る知識を出しているでしょうか?周囲にもいませんか?オープンソースのシステムに文句ばかりいう人。オープンソースは「不満があればコードで語る」のがルールです。おそらくそういう基本ルールすら知らないのではないでしょうか。「共有」は幻想だと思っています。

現実には技術、知識はまったく共有されていると思えません。
最近、私は個人のブログにも書いていますが、日本の現場のエンジニアはこういう議論から遠く離れていて、スキルもなにもないと感じています。
仕事がら導入のトラブル報告などを見ることが多いのですが、64bitと32bitの区別すらアヤシイ自称エンジニアが現場に参入してきます。データベースといえば、マイクロソフトアクセス程度で、SQLサーバーなんて不要などと平気でいうような人も見かけます。トラブルが起きるとすぐにその場にいない人のせいにし、お客は真に受け、話が大きくなります。

でも、その現状の当人が悪いと言いたいわけではありません。年収400万円から500万円と年棒制にされ、残業は裁量労働だといわれ、実質ただ働きを強いられている人々は、OLより安い給料だということです。その程度の人間しかいなくて当然だと思います。
いまや、技術料は無料でエンジニアに支払われていないのが、今の日本のIT業界です。
東京電力福島発電所で、東電は日当10万円払っているはずが、現場は8千円というのはヒトゴトではありません。
こんな状況でスキルアップの話をすること自体、虚しく感じています。
むしろ、特殊技能として生き残り、知識の伝播がうまくいかないメインフレームエンジニアのほうが、比較すれば技術者らしくふるまっているのではないでしょうか。

Comment from lady20
Time 2011年10月2日 at 11:10

一番の大きな原因は、メインフレームメーカー&関連業界が、技術者を育てようとしていないからだと思います。
特に初期においては自力だけでスキルをつけるのは困難を極めますが、その初期研修さえ、十分でないと感じます。

あ、自己紹介が遅れました(^^;)お初です。
メインフレーム歴xx年のlady(?)です。運用もコーディングもやってますが、最近は相談する相手もおらず、たまたま検索中にこのサイトを見つけて、一年近く読ませていただいております。
数々の多岐にわたる内容に敬服しております。

Comment from takao
Time 2011年10月2日 at 12:17

あ、それは鋭い指摘ですね。
以前はIBMのソフトウェア技術員も大雑把にジャンルが別れていたんですが、メインフレームが儲からなくなってから、なんでも見なくちゃいけなくなってしまいました。
同様に外部の研修もかなりおざなりですよね。とてつもなく素人向けか、いきなり詳細。コースマップどおり進める人なんているのだろうか?
このサイトがまさにそこを埋めようとしているわけですが、、、